2013.9.27

 

 

 

或る時、十数名で似顔絵を描き合う機会があった。

 

その時、「どこ見てるの?」と相手に言われ、皆におかしいと笑われ気づいた。

 

私は彼女の顔を視界の端の方にぼんやり入れて描き進めていたからだ。

 

つまり目や口などではなく彼女のうしろにあるものを、漠然と、だが自然にみていた。

 

所謂表面的な細部は必要なかったのだ。

 

いつも自分はここにいる、しかしここにいないと言う状態だったのだろう。

 

例えば作品のカテゴリーや技法や作風なんて本当にどうでも良い話だ。

 

描く事はどう生きるかと言う事だ。

 

その時私はそれを自分の長所と捉え生きる事にした。

 

私は何か得体の知れないものに猛烈に認められたかった。

 

何かを追いかけながら追われ続けていた。

 

しかし滑稽だ。その正体は自分自身だったのだ。

 

そう言う事を私は当たり前のように知らなかった。

 

いつからか私が無数にある気がした。

 

私はあなたかも知れないしあなたは私なのかも知れない。

 

 

(宮本三郎 明日の表現を拓く / 世田谷美術館分館に寄せて)